食べにくい状況がフレイルの要因?
少し前にフレイルという言葉の説明をしました。 簡単にまとめると加齢による運動機能の低下や気力の低下を表す用語です。 予防の基本は適切な運動と食事、それもタンパク質の摂取です。
ここまでが前回の内容ですが、今回は食事について説明します。
8020すなわち80歳で20本以上の歯があることを、健康長寿のための基本目標にしよう。 これは平成元年(1989年)に厚労省と日本歯科医師会が提唱したスローガンです。 ベースにあるのはお口に起因する全身機能低下の負の連鎖を予防することでした。
歯数の減少(治療していない歯)、合わない義歯(入れ歯、かぶせもの)による噛む機能の低下→噛めない・噛まない→やわらかいもの・食べやすいものを食べる→栄養バランスが偏る(いわゆる偏食状態)→筋力の低下・全身状態、健康状態の悪化→様々な事が面倒になる→健康管理ができなくなる→全身・お口の健康状態の悪化→噛まない・噛めない→・・・延々と続く負の連鎖です。
実はお口の健康の衰え、つまりオーラルフレイルの予防が全身的な健康の衰え(フレイル)の予防につながることが理解できます。
気付きのポイントは?
・最近やわらかいものを食べる(食べにくいものが増えてきたので 好物をいつの間にかあきらめている)
・食欲がなく適当にありあわせの食事で済ます
・食事中や飲み物を飲む時にむせることがある
・滑舌が悪くなった(しゃべりにくくなった)
これらの項目は、東京大学高齢社会総合研究機構が設定したオーラルフレイルの危険度チェックの項目です。
確かに健康な歯が多ければ何でも食べられます。 勘違いしないでください。 健康な歯とは治療をして立派に機能している歯も含みます。 さらに歯がなくてもしっかりと機能する義歯(入れ歯)も含みます。
つまり80歳20本の歯は機能している歯の数で、噛むと痛い歯や揺れて頼りない歯は含みません。 全ての歯を失って総義歯(総入れ歯)を装着していても、しっかりと食事ができれば問題はありません。
全ての基本はやはり食事です。 食べることです。それもバランスのとれた食事をすることです。 それがあって身体機能・筋力が保てます。 そして外に向かって活力を発揮することができます。
お口ってすごいと思いませんか?
天満橋 谷町1丁目 うねざき歯科医院
補綴専門医 指導医
うねざき歯科医院の特殊性ですが、大学附属病院や国立がんセンターなどの専門病院に近く、また補綴専門医のため口腔領域の癌で顎骨や舌を切除した患者様の歯科治療を依頼されます。
8020から見ると歯だけでなく顎骨まで切除されておられる患者様もおられるので不利なように思われるかもしれませんが、基本に忠実に治療して義歯を装着すれば、フレイルとは縁遠い生活をされておられます。
顎骨をほとんど除去され、義歯治療をさせていただいた患者様で、大阪メトロの天満橋駅から3号出口まで、意地でもエスカレーターやエレベーターは使わずに上がることにしている方がおられます。 総義歯でも心配しないでください。